急速凍結とは何かと急速凍結機の種類
そもそも急速凍結というのはどういうことなのでしょうか?これは、その名の通り短時間で凍結する方法のことです。
「最大氷結晶生成温度帯」という、食品の水分が、水→氷 に変化する温度帯(概ね-1℃~-5℃)を素早く突破する冷凍方法を、急速凍結といいます。これに対し、ゆっくり凍らせる方法(通常の冷凍庫)を 緩慢凍結 といいます。急速凍結の基準となる時間ですが、商品の厚みにより全く変わってしまうので基準を作るのはなかなか難しいです。お刺身1切れとマグロ1本とだと、とても同じ時間では凍結できません。では、大きなものは急速凍結できないのかというと、そういう訳ではなく、品物の中の水分が凍っていくスピードが芯まで早く進んでいけば良いのです。
急速凍結:最大氷結晶生成帯を素早く突破させ、氷の結晶を大きく成長させない。凍らせる前に近い状態が保たれる(凍結時間が短いほど良い)
緩慢凍結:ゆっくりと氷結晶生成帯を通っていくので、結晶が大きくなる。食品内部が傷つき劣化しやすい。
上記のように、短い時間で凍結することで,品質面に大きく差が生まれます。緩慢冷凍ですと、氷の結晶が大きく育ってしまい組織を傷つけてしまうため、ドリップがでたり、食感に変化が生まれてしまいます。
左:緩慢凍結を解凍したマグロ 右:液体急速凍結を解凍したマグロ
両方同じマグロなんですが、緩慢凍結では氷の結晶が大きくなってしまい解凍後ドリップが大量に抜け出てしまいます。ハシでちょっと押してみるとスポンジのようにドリップが滲みます。右の液体急速凍結は、ドリップも流れず色や表面のハリも生に近いです。このように、急速凍結とは品質をフレッシュに近い状態で保持したまま冷凍保存しておくための方法のことで、凍結方法により上記のように商品に明らかな品質面の差が生まれてきます。
どうすれば品質の良い急速凍結品になるのか
一言でいえば「凍結のスピードを早くする」という、そのままことです。
具体的な方法としては
冬に風が吹くと寒いと感じるのと一緒で、冷たい風が勢いよく当たればカロリーを素早く奪います。気をつけないといけないのは冷凍庫の風は乾いているので必要以上にあてすぎると、品物の水分が飛んでしまう点です。
・大きな塊で冷凍しない
品物が分厚いと芯まで凍るのに時間がかかります。可能なら品物はなるべく薄くしましょう。
・冷凍庫内で冷気がしっかり全体に回るように工夫する
通常の冷凍庫内は、風の当たるところと当たらないところで凍結にかなりムラがでてしまいます。
・熱伝導率の良い冷媒を使って凍らせる(液体、金属など)
冷凍庫であれば、金属パンの上で凍結したり、上記のマグロサンプルのように液体凍結すると非常に早く品質の良い商品ができます。
・保管について
長期間の品質保持には保管の状態も非常に重要です。冷凍庫は一日に何度かデフロストといって霜取りの機能が働きます。これが曲者で、冷凍庫内の温度その間は、かなり上昇しています。
それが1日に3-4回入るので、その熱をもらわないようにダンボールに入れて保管したり、新聞紙を巻いたりすると品質保持できる期間が、かなり伸びるようになります。
急速凍結機の種類
急速凍結について簡単に触れてきましたが、次は実際の現場でどのような方法や、機器があるのかおおまかにいくつかご紹介します。
・エアブラスト急速凍結機
エアブラストの急速凍結機は、凍結対象の商品に大きなファンで冷やした空気を吹き付けて凍結、冷却時間を速くしてやろうという機器です。プレハブ冷凍庫内で大きなファンを使い凍結をかけるのが一般的でしたが、現在は上記の写真のように、ホテルパンを差し込み、すぐ横の冷却ファンで急速凍結をおこなっていくオールインワンの形になっている機器が、最もポピュラーな急速凍結機であるブラストチラー、ショックフリーザーといわれるものです。熱いままの料理の冷却に使用することが多く、60℃~10℃位の菌の発生しやすい温度帯を早く突破して菌を抑制する事が大きな目的です。
冷却に使うとブラストチラー、冷凍まで行うモードで使用するとショックフリーザー と言葉としては使われています。
・誘電凍結機
冷却の方式は、エアブラスト凍結になりますが、それに磁場の力をプラスして水分子を微振動させながら凍結させる凍結方法。凍結スピードはエアブラストと同等ですが、微細な氷結晶になり高品質をキープできる。磁場の発生に他の急速凍結機より多くの電気代がかかります。磁場をかけた凍結方法に関しては、賛否あり実際の凍結実験をしっかり行ってくれるメーカーさんを選びましょう。
磁場凍結に関する参考記事 - 水産Times社HPより引用 -
・液化ガス凍結機
液体窒素(-196℃)や、液化炭酸(-78.5℃)等の、超低温のガスを直接ふきつけて凍結する方法の凍結機です。エアブラストよりも急速に凍結できるので高品質を維持できます。フロンなどの冷媒が必要ないので、室外機も必要なく機器が単純で故障しにくく、電気代がほとんどかからないのが特徴です。しかし、ガスを直接吹きかけることにより消費していくので、定期的な補充が必要で、凍結コストは他の凍結方法よりもかなり高額になります。
・液体急速凍結機
ブライン凍結とも呼ばれたりしますが、塩化カルシウムを溶かした水や、エタノールに漬け込んで急速凍結をかける機器です。現在は、船上の凍結を除き食品に対して影響のないエタノールで使用することが一般的です。アルコールは、冷えていると蒸発はしないので、自然と減ることはありませんが、商品に付着して外に持ち出した分を補充する必要があります。液体に直接漬け込むので真空包装などのパックをすることが必要なところが、使いずらい点です。他の急速凍結機よりも凍結スピードが、かなり速く最高品質を維持できます。
まとめ
急速凍結の方法や機器は、本当に沢山の選択肢から選べる時代になってきました。大切なのは実際に試して、想定される保管期間や状態を極力再現して試験を行いどの方法、機器が、自社に最適かを判断することだと思います。この記事が、対象商品やオペレーションにしっかりとマッチする急速凍結法、機器を選定してくださる事の手助けになれば幸いです。