急速冷凍とは?品質保持に重要な要素やメリットと種類
この記事では、急速冷凍の定義とメリット、品質保持するために重要な要素をご紹介。急速冷凍の種類についても説明させていただきます。
目次
急速冷凍とは
定義と緩慢冷凍との違い
食品の中の水分は、概ね-1℃~-5℃の間で水から氷へと変わります。この間を最大氷結晶生成帯と言いますが。「急速冷凍」とは、この温度帯を短時間で通過することを指します。
急速に冷凍することで、食品中にできる氷の結晶が細かくなり、食品に与えるダメージが少なくなるというメリットが生まれます。
一方、一般的な冷凍庫で凍結させることを「緩慢冷凍」と呼び、時間をかけて冷凍してしまうと氷の結晶が肥大化、食品の食感が悪くなり、細胞膜の破壊のよるドリップ流出、融点の違いによる食品成分の分離などが発生し食品の品質低下を招いてしまいます。
急速冷凍とは、可能な限り凍結前の状態に戻すための技術と言えます。
写真出典:一般社団法人 日本冷凍食品協会
急速冷凍のメリット
鮮度を保てる
氷結晶が、細かく出来上がるので、細胞を破壊せずに冷凍も可能。そのため、解凍時のドリップが減少し、肉、魚なども解凍後高鮮度のまま使用することができます。
ロスの削減
冷凍で高鮮度保管が長期間可能になれば、たとえ生食用の食材でも、年間を通して計画できる。使用したいときに、使用したい分だけ解凍して使えるので様々な現場で食品ロスを削減可能。
仕入れ単価の低減
旬の食材を安価な時期にまとめて仕入れ保管が可能になるので単価を抑えた仕入れが可能。
出荷時期のコントロールで、価値が最大化するタイミングで生産販売できれば同じ商品でも粗利が変化してきます。
オペレーション効率化
セントラルキッチンや加工場で、下ごしらえし商品をまとめて急速冷凍しておき、それを使用して生産をすることで、年末などの繫忙期に作業を軽減、無くすことも可能。
販売チャンネルの拡大
クオリティが落ちるから冷凍はできないと思っていたものが、急速冷凍で冷凍可能になれば商圏を一気に拡大することができます。時間も物理的な距離も超えて商品を遠くで販売することが可能となります。冷凍自販機や益々広がるスーパーの冷凍売り場でも個性的な商品は必要とされています。
品質保持に重要な急速冷凍の要素
早く熱を奪う
間違えてはいけないのが、急速冷凍が必ずしも低温=短時間ではないという事。
-60℃のストッカーよりも、-30℃で急速冷凍目的に設計された機器の方が速い凍結が可能です。また、商品の厚みも重要な要素で、薄手のものは急速に冷凍をし易いですが、分厚くなると中心部に氷結晶ができるまでの時間が一気に伸びてしまいます。
商品を乾燥させない
空気は低温になるにつれ水分を含むことができなくなっていきます。よって冷凍庫の庫内は、非常に乾燥しています。急速冷凍するためには、その乾燥した空気を、商品に強く風を吹きあてて凍結をかけるのですが、これは商品表面の水分を奪ってしまう事につながります。生で食べるような商品は、特に乾燥に気を付けたいところです。急速冷凍をしつつ、あまり乾燥させない事がより良い条件となります。
凍結ムラをなくす
冷凍庫内というのは、どの場所も同じ条件ということはありえません。冷気の当たりやすい場所、あたりにくい場所が必ず発生します。同じ品質で商品を製造していくには重要な要素で、凍結対象はなるべく薄手で厚みが均一だと急速冷凍し易いです。
急速冷凍機の種類
ブラストチラー、ショックフリーザー
「急速冷凍」「急速冷却」をしたいと思った時に、一番一般的な選択肢のエアブラスト急速冷凍機です。
大きなファンで横についているホテルパンに入った商品を、一気に冷やすための製品です。冷凍、冷却を1台でこなせる大量調理の現場で多く使われる商品です。
液体凍結機
熱交換速度の点で、圧倒的に利点のあるフリーザー。アルコール液を冷やしこみパックした商材を浸漬し冷凍させます。ステーキ肉くらいであれば数分で完全凍結可能なくらいのスピードがあり、ともかく品質が非常に良い凍結法。
「凍眠」は、自信をもってお勧めできる液体凍結のパイオニア企業テクニカンがつくるアルコール凍結機です。
特殊エアブラスト急速冷凍機
乾燥させないよう特殊な気流をつくったり、電気を利用しながら水の分子を整えて冷凍したりと様々な種類があります。メリット、デメリットも様々で、自社の食品にあうか実際に試し、メーカーの話や導入している人から話を伺うのが一番良いでしょう。ただ、共通しているのは、「急速冷凍」を目的にしているという点。どんな技術を使用しても「早く凍らせる」ということは品質を担保することにおいて最重要の事項と言えます。
まとめ
いまや急速冷凍は、食品業界において必須の技術になってきています。製造者の創意工夫や凍結機の技術革新により、冷凍品は通常の調理品やチルド品と遜色がないレベルまできています。冷凍食品専門店が増え、既存のスーパーやコンビニも冷凍の売り場を大きく増やし、しのぎを削っています。生が一番美味しいというのは確かなことですが、生産現場の様々な効率面や、購買層が求める「冷凍」の利点は「生鮮」のそれを大きく上回っている以上、「急速冷凍」の価値もますます大きくなっていくでしょう。