焼きたてを冷凍パンで実現。前例のない挑戦と、変革に向けた取り組み
サンジェルマン 様
1号店のオープンは1970年。厳選された素材を使い、その素材の持つ特性を最大限に生かすこだわり製法で、今や首都圏を中心に店舗を多数展開、世代をこえて愛されるパン屋さんです。2022年の7月、テクニカンの“凍眠”を導入いただきました。
POINT!
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導入のきっかけ
コロナ禍による売上低迷
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活用法
フードロス対策 / 販路拡大
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販売商品
丹波黒豆の国産お米のもちもちパン、ウインナードッグ、ブランドーナツ、くるみパン、マヨナンロール など全12種類
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今後の目標
冷凍パンのオンラインショップ展開
目次
パンは焼きたてがおいしい。 だから、冷凍しました。
「そもそも、パンを冷凍で売る発想は無かったです。いかに焼きたてで提供するかを考えていますから。」と話すのは、サンジェルマンの店舗運営支援部の安田さん。パンは一般的に消費期限の短い食品であり、翌日廃棄になる商品がほとんど。でも空気凍結をしてしまうと、水分が抜けてパサパサになったり、香りや風味がなくなってしまいます。
コロナ渦で客足も減り、何か対策をと考えていた最中出会ったのが、テクニカンの提供する液体急速凍結機「凍眠」。凍眠は通常の空気凍結よりも圧倒的に早く食品を凍らせて、細胞内の水分膨張を抑え、食材の劣化を防ぐことができます。凍眠なら、消費期限の短さを解決しながら、焼きたてパンのおいしさをいつでも提供することが出来るかもしれないと、導入に踏み切っていただきました。
実際に凍眠で凍結させたパンの味の感想を伺うと、「全然遜色ない、焼きたてのパンとほとんど変わらないです。」と安田さんは言います。
サンジェルマンさんが好きで、いつも店頭に並ぶパンをまとめ買いしていた一人暮らしのお客様も、今では保存期間でも品質の落ちない冷凍パンを購入されるようになったそうです。
おいしさを保つための工夫
パンを1つ1つ袋に詰め、脱気をしてなるべく空気と触れ合わないように。そうすることで保存期間中の酸化を抑え、高い品質での保存が可能になります。また、パンのような柔らかさや食感が大切な食品は、圧がかかり過ぎて潰れてしまわないようバランスを見ながら脱気することが大切。「今はまだ脱気作業は手動ですが、いずれは空気の量も調節しつつ連続的に脱気ができる機械を導入して、効率をあげていきたい。」と考えているそうです。
凍結時間は、たったの45分!
サンジェルマンさんでは、パンを凍眠で凍結させるまでに必要な時間は45分間としています。パン自体にも空気が含まれているため、他の食材と比べると少し時間がかかりますが、それでも通常の冷気冷凍に比べればかなりの時短です。凍眠後はパックに付着した液体をしっかりと切って冷凍庫で保管します。
消費期限についての課題
ベーカリーは消費期限の短さから、フードロスが多い業界として知られています。サンジェルマンさんでは、工場直売のアウトレットを構え、形が悪く店頭に出せないものは半額で提供するなど、以前からフードロス削減に努めてきました。
凍眠の導入により冷凍保存ができ、消費期限が伸びることで、より一層の削減が見込めるようになります。
しかし、その消費期限を決めるには、どうしても時間がかかってしまいます。
「消費期限を設置するには、製造日から品質の劣化を1日ずつ追って検証する必要があります。この消費期限が決まらないことには、計画生産をして効率化することはできないので、販路に乗せられないんです。概算では消費期限は1年ほどかと思いますが、確定しないことには動くに動けないんです!」と歯痒い想いの安田さん。まだ凍眠を導入してから間もないので記録も数ヶ月ほどですが、消費期限が確定すれば計画的にストックが作れるようになり、効率化を目指せるといいます。
生産ラインの課題
サンジェルマンさんの工場は、手作業をメインとした小さい作業場と、機械作業を中心とした広い作業場が隣接しています。凍眠の凍結機が置かれているのは、まだ小さい作業場のみ。
目と鼻の先にある作業場と言えども、一度凍結させたパンを移動させることは安全面からNGとしているため、今は小さい作業場で全ての凍結 & 保管をしなくてはなりません。
「今は本当にチャレンジの段階で、小さいところでギリギリの状態で頑張ってます。商品の賞味期限が確定して基盤が固まれば、冷凍庫を増やすなり、向こう(機械メインの工場)にも凍眠を導入するなり、拡大させるチャンスが見えると思うんです!」と語る安田さん。
計画やフローを見直しながら徐々に進展させ、まずは短期間で小さくても成果を出し続けること。それがより大きな成果に繋げるために必要なことだと感じました。
挑戦なくして成功はなし!販路拡大に向けて
凍眠を導入するメリットの1つに、販路拡大があります。サンジェルマンさんでも冷凍パンのオンライン販売に向けた準備を行なっているそう。「初めの一歩として、直売所にショーケースを作り、店頭でも売りつつオンラインのオーダーが入ればそこのストックから出荷、みたいに考えています。」
2022年9月末からは、新宿高島屋店でも販売。「パンの冷凍は今までにないジャンルなので、オーナーさんはかなり乗り気でした。」さらに「冷凍パンの自動販売機なんかも置きたいですね。」など、販路拡大に向けて着々と準備をされている様子でした。
冷凍パンは前例が少なく、まだまだ課題だらけのご様子でしたが、インタビューの中に今後の野望をお伺いすると、「世界進出かな(笑)」と冗談混じりに笑って答えられたのが印象的でした。我々テクニカンは機械を導入して終わりではなく、サンジェルマンさんの拡大に向けて引き続きサポートさせて頂きたいと思います。